これまで何度もコンテストガーデンで作庭をしてきましたが、こちらの日比谷公園ガーデニングショーでの作庭は、今後のコンテストガーデンを見越して実験的に挑戦したもので、これ以降の2013年、2014年と続けたコンテストガーデンにおける作庭の基盤となった作品です。
コンテストガーデンというと、張りぼての建物や安っぽいウッドデッキに、色だけで選ばれた質の低い植物を密植し「チグハグ」な作品がほとんどで、どこに見る価値があるのか?といつも疑問に思っていました。
そして気になる点は、搬入してその場で施工するため、植物たちは「連れてこられました」「いま並べられました」感が満載の植栽(植栽というのか?組み合わせて並べただけ)。
どの部分を見ても美しさが感じられない、せめて植物が馴染んでいたら、安っぽい設えでもなんとかなるのに・・・と。
そこで、ボクが生み出した方法は・・・「畑で作庭してそのまま搬入」というもの。
バカなことを考えるのが大好きなので、ほとんど人には理解されないし、バカらしすぎて誰も真似しない・・・でも、この方法は必ず美しいと評価されるはずと確信をもって取り組みました。
「畑で作庭そのまま搬入」とは、具体的にはどういうものか?
それは・・・自分の生産圃場(畑)にコンテストガーデンで作庭するものをそのまま作ってしまう、というもの。
コンテストでは作庭する面積が決まっていますから、畑に同じ形と大きさでバミリをして、そこに植栽をします。そのまましばらく養生して搬入するのですが・・・さすがに畑に植えたものを掘り上げて搬入することはできません。根を切って搬入すると植物は萎れるからです。
そこで考えたのが植物を出荷するときに使う黒いケースに植え込むという方法です。
つまり、黒いケースがプランター代わりということ。ケースはメーカーにより大きさは多少異なりますが、おおむね30㎝×50㎝、高さが9㎝ぐらいです。このケースの底に、空いた土袋を切って敷き、水抜けの穴を無数に開けます。
そこにコンテストで表現したい植栽をします(植える)。ケースからは根が出ないので、しばらく養生してケースごと搬入します。面積によりそのケースの数が10ケースだったり20ケースだったりしますが、ケースは連結していませんからバラして搬入、現地でカセット式にはめ込むだけで完成します。ケースを置くだけなので信じられないぐらいの短時間に、なぜこんなに植物同士が馴染んだ状態が出来上がるのか、とみなさん驚きます。
日比谷公園ガーデニングショー2012 ライフスタイルガーデンでは、植物以外にアンティークの道具類も使いました。道具類に自然に絡みつく植物の場合、通常コンテストガーデンなどではその場で絡んでいるように見せかけるわけですが、養生の段階から道具に絡ませて搬入するので、誰がどう見ても馴染んでいます。
そのようなちょっとした作りこみで、作品の勢いや世界観が変わります。
自分自身、このような事前植栽での搬入は初めての経験でしたが、ライフスタイルガーデンにおいて「アイデア賞」をいただいた記念すべき作品です。
これ以降、「畑で作庭そのまま搬入」をベースに、簡略化しつつ更に見せ方の工夫を追究し、ボクなりの確立した方法を編み出しました。